「伝える」と「伝わる」では、
一文字違うだけですが、
意味合いはまったく違いますね。
「伝える」の主語は、基本的に自分であって、
「伝わる」ためには、文脈的に相手が
必要になります。
相手を慮る意識が必要ということですね。
商品やサービスの魅力を伝えようと
努力することは大切ですが、
「伝える」という意識が強すぎると、
ついつい自分本位になってしまいがちです。
言葉を使って、商品の価値を
相手に「伝わる」ようにするのが
広告コピーだとすれば、
そこから「伝える」ではなく
「伝わる」言葉の方法論が学べるに
違いありません。
そこで、広告コピーを通じて
「伝わる」言葉について、
こちらの書籍から学んでいきます。
『ここらで広告コピーの本当の話をします。』
小霜和也 著 / 宣伝会議 刊
本書を読む目的
- 広告コピーを通じて「伝わる」言葉の作り方を学ぶ
内容から得られたもの
モノの“価値”とは、ヒトとの関係性で決まる
もし、いま、あなたの目の前に僕が現れて、
「このグラス一杯の水道水、百円で買いませんか?」
と言ったら、あなたは蔑むような眼で、
「頭だいじょうぶですか?」
って言うでしょう。
でも、もし、あなたが砂漠で遭難して飲み水が尽きていたら、1万円出してでも買ってくれるんじゃないでしょうか。(中略) これが価値というものです。価値とはモノとヒト(の置かれた状況)の関係性で決まるのです。
P.37-38
言われてみれば当たり前のことですが、
価値は絶対的なものではなくて、
受け取り側の状況による
相対的なものなんですね。
自社製品などの価値を「伝える」という
発想でいると、無意識のうちに、
上記の「このグラス一杯の水道水、
百円で買いませんか?」ということを
やってしまいます。
相手のシチュエーションを考えず、
この「水」どうよ? みたいな言い方に
なってしまうということです。
価値とはモノとヒトの関係性によって
決まるとすれば、まず、
モノとヒトそれぞれの情報が
必要ということになりますね。
モノとヒトの関係を創る・改善する
・商品としての具体的な情報、競合との違い“USP”
・その商品を買ってくれそうな“ターゲット”
この2つがそろわないと、広告のコピーを書くことはできません。だから、広告制作の依頼やコピーの課題があっても、すぐに机に向かってコピーを書く、というのはダメなんです。
P.39
上記のUSP(Unique Selling Proposition)とは、
直訳すると「独自の売りの提案」で、
一般的には「競合優位性」と
訳されるマーケティング用語です。
価値が相対的である以上、
独自の売りも相対的になるはずで、
そのため、優位性というのは、
競合ありきの話ということになりますね。
要するに、商品やサービスの
「特徴」ではないということです。
「彼を知り己を知れば百戦殆からず」のような話で、
まず相手を知ることで、
自分の立ち位置を把握し、
そのことによって、
戦いやすい場所(上記でいうターゲット(想定顧客))が
探しやすくなるということだと
わたしは考えています。
著者は、コピーを書く時の大事なこととして
“商品”の広告コピーは成立するが、
“カテゴリー”の広告コピーは成立しない
と述べています。
たとえば、わたしは「人間」という
“カテゴリー”に属しています。
広告コピーを自己紹介と例えた場合に、
基本的には、
自分独自のこと、他の人との違いを
意識して話すはずなので、
「人間とは○○である」というような
話はしないよね……ということです。
自分の立ち位置を把握するということは、
自分(商品やサービス)が
どのカテゴリーに属し、
そのカテゴリーでの競合と
どのような違いを持っているのかを
知るということだと思います。
コピーを書くということは「マーケティング的」作業が9割
コピー作業の中で、机に向かってペンを走らせる(あるいはPCに向かってキーボードを叩く)作業は全体の1割くらいと思ってください。その手前の「マーケティング的」作業、つまり「考える」が9割です。競合を調べ、商品のUSPを見極め、ターゲットを決め、彼らの欲求や不満、不安に思いをはせる。こういったことが「コピーを書く」ということの本質なんです。
P.88-89
相手を知ることが、
ほとんどの作業ということですね。
コピーを書くことの本質と書いてありますが、
「伝える」言葉と「伝わる」言葉の違いは
ここだと思うのです。
まとめ
まず、価値が相対的であるということを
意識することが重要だと思いました。
価値が相対的であるからこそ、
モノとヒトの関係性を「定義」する
言葉が必要になってくるということですね。
そのためには、立ち位置を把握する必要があり、
まず、競合を何にするか決めて、
ターゲットを想定し、
どういうコンセプトであれば求められるのか
…ということを調べていくことになります。
「伝わる」言葉を考えるということは、
立ち位置を踏まえたうえでの情報提供に
他ならないということですね。
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